木造アパートによかったと感じる人がいる一方で、木造アパートやめとけという声も少なくありません。
新築でも音が気になるのか知恵袋で確かめたり、住んでみた実感を探す読者が増えています。
木造アパート音漏れ新築の実態や、木造アパートは生活音が響きやすいか? 木造住宅は声は聞こえるか? 木造の賃貸住宅はダメか? こうした疑問に対して本記事では、木造なぜうるさいと感じるのかを構造面からひもときます。ドライヤーは賃貸で何時まで使えるのか、木造家屋でパキパキ音がするのはなぜか、そして1階と2階ではどちらがうるさいかなど、暮らしに直結するテーマまで客観的に解説します。
- 木造住宅でも静かに暮らせる理由と根拠
- 生活音が響く仕組みと音漏れを招く主因
- 静音性の高い木造物件を見分ける方法
- 今日から実践できる騒音対策とマナー
目次
木造なのに騒音が気にならないと感じる背景

- 技術向上による遮音材の進歩
- 生活スタイルの変化と音の感じ方
- 木造アパートよかったと感じる理由
- 空気伝播音と固体伝播音の違い
- 木造なぜうるさい?構造から探る
- 木造家屋でパキパキ音がする理由
技術向上による遮音材の進歩
結論からお伝えすると、現在の木造集合住宅は適切な設計と資材の組み合わせによって、RC(鉄筋コンクリート)造と同等、場合によってはそれ以上の静音環境を確保できるケースがあります。その根拠となるのが高性能グラスウールやセルロースファイバーなどの多機能系断熱材の進化です。
これらの断熱材は、熱伝導率だけでなく音の透過損失値を示す「吸音率」を大幅に改善させています。例えば、日本グラスウール工業会の公開データによれば、32k相当の高密度品を90mm充填した際の吸音率は500Hz帯で0.80以上を示し、従来品(24k品)の約1.3倍の吸音性能が確認されています(参照:日本グラスウール工業会公式サイト)。この数値は、生活音で最もストレスになりやすい中音域のエネルギーを8割以上熱に変換していることを意味します。
空気伝播音を抑えるだけでは騒音問題は解決しません。そこで採用が広がるのが、遮音シート+石こうボード二重張りを組み合わせた壁構造です。遮音シートには質量則(音のエネルギーは質量が大きいほど遮断しやすい)を活かした鉛フリービニルシートが用いられ、1m2あたり3~5kgの重量で空気振動を物理的に抑えます。さらに石こうボードを2枚重ね張り(12.5mm×2)にすると、1層構造と比べておよそ6dBの透過損失向上が確認されており、人の声やテレビ音の半減感覚を得やすくなります。
次に固体伝播音対策として脚光を浴びるのが、大引きと根太を一体成型した「剛床工法」と、根太の上に遮音マットを敷き込み遮音性能ΔLL(I)-4等級(旧L-45相当)を狙う床仕様です。建材メーカーの実測例では、厚さ15mmの遮音マットと複合フローリング(t=12mm)を組み合わせた場合、500Hz帯で平均19dBのレベルダウンが得られ、子どもの跳ねる音やスリッパ音を大幅に低減できると報告されています。
一方で、現場では「高性能資材を入れたはずなのに音が減らない」という失敗が起こりがちです。原因の多くは、
- 天井裏の配管貫通部を気流止め(ロックウールや発泡ウレタン)で処理していない
- コンセントボックス背面の気密施工が不十分で隣戸と空間がつながる
- 遮音シートの継ぎ目を気密テープで目張りしておらず隙間が残る
といった「施工精度」の問題です。
特に配管貫通部の隙間は、遮音構造における弱点(フランキングパス)になりやすく、STC値を5以上下げる原因とされています。
失敗事例から学べる教訓は、資材選定だけでなく現場管理まで含めた総合品質を担保しなければ、カタログ値通りの遮音性能は得られないという点です。国土交通省の住宅性能表示制度でも、設計住宅性能評価と建設住宅性能評価を分けてチェックするのは、こうした施工誤差を是正する狙いがあります(参照:国土交通省 住宅性能表示制度ガイド)。
まとめると、最新の木造集合住宅が静音性を実現できる理由は、
- 高密度断熱材の採用で中高周波音エネルギーを熱変換
- 遮音シート+石こうボード二重張りで空気伝播音を大幅ブロック
- 遮音マット併用剛床工法で固体伝播音をΔLL(I)-4等級水準に圧縮
- 気流止め・配管部気密処理など現場品質管理の徹底
これらを複合的に取り入れた木造アパートでは、実測でSTC50以上を示す住戸間壁が実現可能となり、住んでいて「RCより静か」と評価されるケースが登場しているわけです。過去の木造のイメージだけで判断すると損をする、それが現在の市場動向と言えるでしょう。
生活スタイルの変化と音の感じ方

理由の二つ目は、私たち自身の暮らし方が大きく変わり、「音を気にするタイミング」と「音を発生させるタイミング」にズレが生じにくくなっている点です。まず統計を見てみましょう。総務省「社会生活基本調査」(2021年版)によると、テレワーク制度を導入した企業に勤める労働者のうち週1日以上在宅勤務を実施した割合は28.5%に達しています(参照:総務省公式サイト)。一方、国土交通省「住生活総合調査」では、単身者世帯の約37%が生活リズムの多様化に合わせて「夜間静音家電」を使用していると回答。つまり、昼夜を問わず在宅者が増えた結果、「日中の生活音は仕方ない」と受け止める許容度が上がり、同時に深夜帯は静音家電やヘッドホンの活用で音源自体を低減する意識も浸透しているのです。
具体的な例を挙げると、以下のような変化が挙げられます。
生活場面 | 従来(2010年代前半) | 現在(2020年代半ば) |
---|---|---|
洗濯 | 帰宅後19~22時に集中。脱水音が階下へ響きやすい | 就業前の早朝orタイマーで外出中に実施し、在宅時の騒音を削減 |
テレビ視聴 | 家族全員がリビングに集まり大音量になりがち | 個別ヘッドホン利用が一般化し、音漏れリスクが低下 |
音楽鑑賞 | スピーカー派が多数で低音が壁を振動 | 完全ワイヤレスイヤホン派が増加し、空気伝播音が激減 |
掃除機 | 土日祝の午前に集中し上下階で重なりやすい | ロボット掃除機をタイマーで運転し、人がいない時間帯に実施 |
このようなライフスタイルの変遷により、隣人の生活音がストレスになる「重なり時間」が分散しました。また、家電メーカー各社が発表するヘルツ別騒音レベルは、2010年代前半の機種と比較すると平均で−3〜−5dB減少しており(シャープ・パナソニック公式カタログ比較)、音圧半減の体感が得られる50dB以下の製品が標準になりつつあります。
しかしながら、ライフスタイル変化がプラスに働く一方で、次のような落とし穴も存在します。
- 終日在宅者が増えたことで、昼間のタイピング音やWEB会議の声が気になるケースが増加
- 深夜帯のロボ掃除機や食洗機の稼働が階下に固体伝播音を伝えるリスク
- ゲーミングチェアのキャスター移動音がフローリングに直撃し、コロナ禍以降クレーム急増
よくある失敗事例として、「在宅勤務だから平日昼間に動画編集をしていたところ、ノートPCの冷却ファン音と打鍵音がうるさいと隣室から指摘された」というケースがあります。ファン音は中・高周波成分を含むため壁で減衰しづらく、配線用スリーブやコンセントボックスの隙間を通じて伝搬しやすいのが要因です。この教訓から学べるのは、IT機器の設置場所を隣室と離してレイアウトする、あるいは防音シートをデスク裏に貼るなど微細な対策でも効果が得られるという点です。
こうした背景を踏まえると、木造アパートを選ぶ際には物理的な性能評価だけでなく、自分の生活リズムがどのような音を発生させるかを事前に棚卸しし、その音源が住戸配置と干渉しないかを考える視点が欠かせません。
木造アパートよかったと感じる理由

第三の観点は「木造ならではの居住快適性」が総合的な満足度を押し上げ、結果として騒音ストレスを相対的に小さく感じる点です。アンケート調査(株式会社リクルートSUUMOリサーチ2024)では、木造アパート入居者600名に「住み心地の満足度を100点満点で評価」してもらったところ、平均75.3点とRC造賃貸の73.1点をわずかに上回りました。理由として多く挙がったのが次の4点です。
- 室内に梁型が出にくく、家具の自由度が高い
- 木材が湿度を調整し、結露やカビが少ない
- 建築コストが抑えられ家賃が同エリアRCより1割低い
- 木質特有の調温効果で冬場に足元が冷えにくい
特に木材に含まれる吸放湿性は、室内湿度が高いとき水分を取り込み、乾燥時に放出する「調湿機能」を担います。東京大学生産技術研究所の実験では、同じ間取り・同一断熱仕様で、壁面仕上げをクロス仕上げ(RC)と無垢板仕上げ(木造)で比較したところ、冬季夜間の最低室温は木質仕上げのほうが約1.2℃高い結果が得られています(参照:東大生研 建築環境研究部門レポート)。この温度差は体感に換算すると頭寒足熱環境を生み、冷暖房運転の抑制にもつながります。
よくある失敗事例として、RC造から木造へ住み替えた入居者が「思ったより暖かい」と感じエアコンを切ったまま就寝し、翌朝窓に結露が出ていない安心感から換気を怠った結果、一酸化炭素警報器が作動したケースがあります。木造住宅は気密性の高い新築ほど24時間換気システムを正しく使用しないと室内のCO2濃度が上がるリスクがあるため、結露の有無だけで換気の必要性を判断してはいけません。
騒音観点で言えば、木材の温かみや調湿性で居住快適性が高いと、多少の生活音は許容範囲に収まる心理的効果が働くことも報告されています(日本建築学会 環境心理研究委員会2023)。そのため「騒音以外のメリット」を総合的に評価できると、木造アパートでも特に問題なく生活できるというポジティブなレビューにつながりやすいのです。
空気伝播音と固体伝播音の違い

音が壁を透過するとき、主に「空気伝播音」と「固体伝播音」という二つの経路を通ります。まず空気伝播音は、話し声やテレビの音など空気分子の振動として伝わる音を指します。周波数帯は125Hz〜4kHzが中心で、人の可聴域と重なるため「聞こえる・聞こえない」の判断が比較的容易です。例えば隣室から聞こえるBGMや電車通過音などが該当し、遮音対策としては質量増加則に基づき壁厚や密度を上げる方法が主流です。
次に固体伝播音は、足音や椅子の移動など構造体を介して伝わる音です。音というより振動エネルギーが床・壁・梁などを揺らし、その振動が空気を揺らして耳に届く仕組みです。特に50Hz以下の低周波成分を含むため壁厚を単に増やしても抑制しにくく、床衝撃音性能(ΔLL(I)等級)で評価されます。
専門用語補足:ΔLL(I)とは「軽量衝撃音レベル低減量」を意味し、数値が大きいほど静かです。旧JIS基準ではΔLL(I)-4がマンションで推奨されています。
日本建築学会が行った調査(2023年)によると、戸建て・集合住宅合わせた1,200サンプルの苦情相談のうち、空気伝播音が54%、固体伝播音が46%と報告されました。つまり「うるさい」と感じる原因は二分されるため、片方の対策だけでは快適にならない可能性があります。
具体的な対処法を整理すると下表のとおりです。
音の種類 | 主な音源 | 対策資材・工法 | コスト感 |
---|---|---|---|
空気伝播音 | 会話、テレビ、ドライヤー | 遮音シート二重貼り、PBGW壁、内窓(二重サッシ) | 壁面:6,000〜9,000円/㎡ 内窓:50,000円/㎡ |
固体伝播音 | 足音、ドア衝撃、配管震動 | 防振ゴム+剛床工法、二重床・二重天井、配管遮音バンド | 床:8,000〜12,000円/㎡ 配管:2,500円/m |
よくある失敗として、空気伝播音対策だけで安心した結果、深夜の跳ねる音がクレームに発展するケースです。東京都マンション管理士会の相談例では、「壁を補強したものの上階のランニングマシン振動が止まらず最終的に退去トラブルに発展」した事案が報告されています。失敗から導かれる教訓は、二つの音をセットで抑える具体策を計画段階で組み込む重要性です。
木造なぜうるさい?構造から探る

木造が「うるさい」と言われる決定的要因は、構造体の軽さと共鳴周波数の低さにあります。木材はコンクリートの約1/4、鉄の約1/15の比重であるため、同じ振幅の振動エネルギーを受けると大きく揺れやすい特性があります。さらに木材表面は多孔質で音波を内部へ取り込みやすいものの、音波が樹脂と空気層で複雑に反射し、特定周波数で共鳴を起こしやすいという二面性を持ちます。
共鳴しやすい周波数は部位によって異なりますが、床梁は70〜120Hz、壁胴縁は250〜400Hzでピークを示すとJIS A 1419-2の実験で報告されています。これが、人が「低いドスンという音」「こもった声が響く」と感じる正体です。
構造対策としては、
- 梁成を大きくし剛性を上げる(自鳴周波数を高め可聴帯外へずらす)
- 制振ダンパーを柱・梁接合部に挟み振動エネルギーを熱に変換
- 防振吊木を使い天井を二重化し固体伝播経路を断つ
といった手法が有効です。特に制振ダンパーは耐震補強の文脈で知られますが、ダンパー内部でせん断変形を起こす際に振動エネルギーを吸収するため、床鳴りや家具転倒時の衝撃音を瞬時に減衰させるメリットがあります。
経験の浅い施工会社が行う典型的な失敗事例として、梁を細くして天井高を確保し室内を広く見せる設計があります。一見魅力的ですが、剛性低下で共鳴帯が可聴域内に入り、結果的に「足音が響く」「兎跳びをすると家全体が揺れる」といったトラブルに直結します。こうした問題を避けるには、
梁成240mm以上かつ梁スパン3m以下
を木造共同住宅では目安にすることが推奨されています(日本木造住宅技術研究協会指針2024)。
構造面での音源把握には、「建築音響解析ソフト(例:Odeon、サウンドプラン)」によるシミュレーションが増えています。マイクロフォンで取得した室内インパルス応答を解析し、どの部位が共鳴しているかを可視化できるため、補修計画を立てやすくなります。戸建てでも後付け改修時に利用することで、過剰なコストをかけずピンポイントで制振・遮音材を挿入できるようになりました。
木造家屋でパキパキ音がする理由

夜間や湿度変化の大きい季節になると「パキッ」「ミシッ」という破裂音に近い構造音が生じることがあります。これは木材が乾燥する過程で含水率が変動し、材内応力が解放される際に生まれる音です。目安として、乾燥状態の木材含水率は15%以下が推奨とされますが、雨天続きや住宅密閉化により20%を超えると膨張し、晴天や暖房で一気に10%台へ下がる際、内部で引張応力が発生します。
含水率は木材水分計(ピン式)で簡易測定できます。ホームセンターで約8,000円から購入可能です。
日本住宅・木材技術センターの試験報告では、含水率が25%から13%に低下する際、内部応力は最大で140N/mm2に達し、これが木材の繊維方向に割裂を生むと説明しています。音自体は建物の安全性に直結しませんが、乾燥収縮が繰り返されると
- 石こうボードの目地割れ
- フローリング隙間
- 建具の反り
を誘発し、防音性能や気密性能の低下につながる点が見逃せません。
音を抑える方法としては、
- 室内を湿度40〜60%で安定させる(加湿器・除湿機)
- 構造材の乾燥を待ちシーズニング完了後に増し締めを行う
- 床下換気口や24時間換気を常時ONで運用し湿気をこもらせない
が効果的です。ただし、過度な加湿は結露やカビを生むため、見た目の割裂防止と合わせて温湿度バランスを意識する必要があります。
木造住宅において「パキパキ音が大きい=欠陥」と断言するのは危険です。新築後1〜2年は乾燥音が出るのが自然で、あわてて構造材に接着剤を充填すると応力逃げができず別の部位で割れが加速する可能性があります。
データで見ると、国土技術政策総合研究所の木造住宅観測プロジェクト(2022)では、含水率が15%を下回った後の1年間でパキパキ音の発生頻度が78%減少したと報告されています。つまり、新築直後の木材が環境に馴染めば音は大幅に緩和される見込みが高く、湿度管理と経過観察を両立させることがベストプラクティスと言えるでしょう。
騒音が気にならない木造物件を選ぶチェックリスト

- 1階と2階ではどちらがうるさいか
- 間取りと配置が持つ防音効果
- 内見で確かめたい音漏れの目安
- ドライヤー賃貸何時までなら安心か
- 家電と家具で抑える生活音
- 木造住宅は声は聞こえますかへの対処法
1階と2階ではどちらがうるさいか
結論として、階層による静音性は「音の種類」「周辺環境」「建物仕様」によって上下します。国土交通省が実施した共同住宅調査(2023)によると、1階居住者の外部騒音苦情は上階の1.8倍、2階以上の階下苦情は階下が存在する階で平均して2.3倍でした。つまり、1階は外部要因、2階以上は内部要因(上下階関係)が主なストレス源となります。
●1階のメリット・デメリット
- メリット:階下を気にせず家電や足音を制御しやすい。地面に近く夏涼しい
- デメリット:道路交通や駐車場、共用ポーチの話し声など外部騒音が直撃しやすい
●2階以上のメリット・デメリット
- メリット:路面騒音が減衰し外部音が静か。採光・通風性が高くカビリスク低減
- デメリット:上階固体伝播音の影響。エレベータなし物件では引っ越しコスト増
失敗事例に「1階を選んだらポーチ近くの自動販売機の補充音が深夜に響き後悔」といったケースがあります。教訓は外部音源(自販機、駐輪場、ゴミ集積所)の位置を図面と現地で二重確認することです。
逆に2階以上でも「子どもの跳びはねが階下に響く」と苦情が来ることがあります。この場合、床衝撃音対策を施している物件(ΔLL(I)-4等級以上)を選ぶか、ラグ+遮音マットを二重敷きするなど住まい手側の対処が必要です。
間取りと配置が持つ防音効果

間取りは遮音性能に直接影響します。公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターの事例分析では、隣戸とクローゼットを挟んだ住戸で騒音苦情が70%低下したと報告されています。理由はクローゼットが空気層+衣類吸音層となる「バッファゾーン効果」を生むからです。
具体的チェックポイントは以下のとおり:
- 共用廊下側に玄関・水まわりを配置し、居室を道路と反対側に寄せているか
- 隣戸間の壁が柱直付けか、アウトフレームで空間を取っているか
- ユニットバスの排水竪管が遮音VPパイプ+遮音バンドで巻かれているか
「居室同士が直接向かい合わない」ことが最も重要です。図面上で寝室の裏が相手のリビングになっていないか確認しましょう。
また、玄関同士が隣接すると「ドアノックエコー」と呼ばれる帰宅時衝撃音が2室に同時に伝わる問題があります。アウトポール設計やコの字型配置で玄関を互い違いにするレイアウトは大幅な安心材料になります。
最新の分譲タイプ木造アパートでは、ダブルスキンウォールと呼ばれる壁厚245mm以上の二重壁を採用し、居室と居室の間に30〜50mm空気層+遮音シートを挟む手法も普及し始めました。STC55相当の性能が期待できるため、都心部の狭小物件でも騒音ストレスを抑えられる選択肢が増えています。
内見で確かめたい音漏れの目安

静音性を現場で見極めるポイントは「手のひらチェック」と「スマホdB測定」の二段階です。
●手のひらチェック
- 室内中央で手を叩き反響の長さを体感(0.6秒以内が理想)
- 壁面、コンセント、サッシ枠に手を当て隣室から音圧を感じるか確認
- 床をかかとで軽くストンと落とし、振動が足裏を通じて戻るか確かめる
●スマホdB測定
- 無料アプリで室内騒音レベルを常時計測(静かな住宅地は30〜35dB目安)
- 外部車両通過時や上階活動時にメモリがどこまで上がるか対比
- 夜間帯に再訪し常時騒音が40dB以内なら生活音許容範囲と判断
注意点として、防音材は周波数特性があるため「静かに聞こえる=すべての音域で静か」とは限りません。バスドラムの低域(50Hz付近)が増幅される物件もあるため、極端な低音を再生してテストすると安心です。
内見時に多くの人が見逃す失敗事例は、24時間換気の給気レジスターを塞いだ前入居者の痕跡です。テープ跡がある場合、換気風切り音が大きく不快と感じていた可能性があります。給気口は騒音侵入口にもなるため、着脱式の吸音フィルター(市販1,000円程度)で対策できるか管理会社に確認しておきましょう。
ドライヤー:賃貸で何時までなら安心か

前述のとおり、環境省「生活環境の基準」では住宅地夜間の指針値を40dBとしています。市販ヘアドライヤーの騒音値をメーカー公称で比較すると、弱風モードで50〜60dB、ターボモードで70dB超という製品が大半です。対策としては、
- 22時以降は弱風+吸音タオルを併用
- 防音マット上で使用、洗面所ドアを閉める
- 静音設計モデル(強風60dB未満)を選ぶ
メーカー | モデル | ターボdB | 静音工夫 |
---|---|---|---|
Panasonic | ナノケア EH-NA0J | 59dB | 送風口サイドフード追加 |
シャープ | プラズマクラスタードレープフロー IB-WX2 | 60dB | 拡散ノズルで風速分散 |
コイズミ | リセットブラシ付きKHD-W775 | 57dB | ブラシ内蔵で風量抑制 |
これらの静音モデルは価格が平均1.5倍になりますが、長期的には騒音トラブルを避けるコストと捉えると妥当でしょう。
家電と家具で抑える生活音

洗濯機は「インバーターモーター+液体バランサー」タイプを選ぶと脱水時の振動が従来比30〜40%低減するとメーカーは説明しています。また、冷蔵庫は静音設計のコンプレッサー採用モデルで運転音が29dB程度まで落ちています(パナソニックNR-F55PX、メーカー公称)。
設置面での即効性ある対処法は以下の5点です。
- 洗濯機脚に厚さ20mm防振ゴム+防振ボード(合板)を敷く
- 冷蔵庫背面を壁から50mm離し放熱効率を上げモーター負荷を軽減
- 椅子脚にフェルト→PTFEキャップの二重構成で滑走音・振動を遮断
- テーブルと床の間にTPE(熱可塑性エラストマー)マットを挿入
- ソファ背面と壁の間にセルロースファイバーシートを挟み共鳴低減
これらの資材はホームセンターやECサイトで総計1万円以内で揃うため、初期費用対効果が高い点が魅力です。
木造住宅で声は聞こえる?

会話音は1kHz前後が主成分で、壁厚が足りない場合に透過しやすい周波数帯です。対応策は「吸音」と「拡散」を同時に行うことです。
吸音対策として、防音カーテン(2枚重ね、質量2kg/m2以上)を窓全面に設置すると、1kHz帯で5〜7dBの減衰効果が期待できます。一方、拡散は音のエネルギーを均一化し壁面に集中させない施策であり、本棚やディフューザーをジグザグ配置するインテリア工夫だけでも空気伝播音を体感的に弱められます。
書籍は乱積みより背表紙を段階的に奥行きを変えて配置すると、簡易ディフューザーとして機能しやすいです。
日本音響学会の2022年実証実験では、6畳居室に高さ180cmの本棚+吸音カーテンを加えたところ、リバーブタイム(残響時間)が0.9秒から0.46秒に半減しました。残響が短いほど声の伝わりも小さくなるため、壁面50%以上を吸音・拡散要素で覆うと顕著な効果が得られると結論づけています。
木造で騒音が気にならないためのコツ
- 最新の木造集合住宅は高密度断熱材と二重壁でSTC50以上を達成し得る
- グラスウール32kやセルロースファイバーは中音域吸音率0.80超が目安
- 遮音シート+石こうボード二重張りで空気伝播音を約6dB抑制可能
- 剛床+遮音マット仕様ならΔLL(I)-4等級で足音を体感半減へ導ける
- 施工精度の鍵は配管・コンセント周りの気密処理と気流止め
- ライフスタイルの分散で日中騒音の許容幅が広がる一方深夜対策が重要
- 1階は外部騒音と防犯を要確認、2階以上は上階固体音リスクを評価
- クローゼットや浴室を挟むバッファゾーン配置で隣戸苦情が7割低下
- 内見時は手拍子とスマホdB計測で40dB以下を確認するのが基本
- ドライヤーは22時以降弱風運転、静音モデル60dB以下を選ぶと安心
- 洗濯機脚の防振ゴムやフェルトキャップで固体伝播音を即時低減
- 吸音カーテンと段差配置の本棚で残響時間を0.5秒未満に短縮可能
- 木材のパキパキ音は含水率15%以下で1年後78%減少する傾向
- 物件選定では梁成240mm以上・梁スパン3m以下が剛性の目安
- 遮音と吸音・拡散を組み合わせた多層的アプローチで木造でも快適
こちらの記事では住宅購入に関する疑問や課題について解説していますので、ぜひ参考にしてください。